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コラム
column

大型パネルを使った横曽根の家の建て方。

横曽根の家の建て方を大型パネルを使って行いました。

大型パネルってなぁに?

って思いますよね。

何か新しい工法でも取り入れた?加盟した?過去にも特殊な工法に否定的(とまではいかないけど、決してそれが優れてるわけではない)だったのに。。。とうとう自力で性能を担保することに限界を感じたのか?

イエイエ、そうではありません。

 

大型パネルとは現場で行う重労働な部分を、工場であらかじめ組み立てて建て方を行う方式です。

特定な決まりや仕様がなく、今までの設計どおり、仕様通りでとても汎用性が高く、建てたと同時に雨仕舞い(防水性)まで完了しているという状況。

上の写真は建て方初日です。

普段は外側は囲われてなく剥き出しのまま、これから2週間ぐらいかけて耐震面材、窓、防水紙を張って行きます。

大型パネルはその作業を工場であらかじめ工事しておきます。

現在の住宅、弊社の場合、耐震性確保のために耐震面材は必須。窓はトリプルガラスの採用が多く、超高気密超高断熱化が一層進んでおります。

その結果、現場で何が起こっているかというと、建材や窓の重量化。

特にトリプルガラスの窓の重さと言ったら。。。

現場の大工さんへの負担が大きく増しています。

 

大工さんは上棟が終わると、外回りを囲うために面材を張ったり窓を取り付けたりするのですが、その際は足場を行ったり来たり。

寸法を測って、平場で面材を適当なサイズに加工して、重たい面材を2人がかりで運んで、狭い足場を移動して寸部狂わぬ位置に面材を納めて、決められた間隔で面材を釘留めしていきます。

作業性の悪い足場の上で。

そして私は、面材の釘のピッチや釘の止め方(めり込んでいたり、入りきっていないもの)をチェックして修正。

(この一文だけ見たら、私は楽してチェックするだけの怠け者に見えてしまう。。。笑)

木は一本の中でも素性が微妙に違うため、同じ圧の釘打ち機でも釘の入り方が違ってくるので大変です。

面材が終わると重たい窓の取り付け。

トリプルガラスはもはや一人で持つことができません。そしてまた足元の悪い足場の上へ。

そして、防水シートをぐるぐる巻きつけて、それでようやく建物に雨の影響がなくなる状態に。

 

実はここまでの工程には、採寸、移動、運搬だけで大きな時間を割いてしまいます。

そして上記の通り、重量物を運ぶため、外仕事、体力勝負の重労働。

低生産性で重労働という過酷な状況が生まれてしまっているのです。

その状況を解決してくれるのが大型パネルという生産方法。

上の写真は先月、工場見学に訪れた一枚。

足場の上、立った状況ではなく、平場で上からの作業でパネルを作っていく様子。

そこは足場の上の移動や重量物を運ぶ事などがなく、人ではなく物が動く状況の中、図面通りに組み立てられていく様子が見れました。

この状況を目の当たりにしたとき、足場の移動やら加工の時間やらがなくなっていく様子が想像でき、現場での安定品質と生産性の向上が目に見えて理解できました。

 

暮らしの工房の建物は大工さんの技術がなくては成立しないほど、細かく造作作業があります。

大工さんの本来の木を扱う技術があってこその住まいであり、それが暮らしの工房の住まいの生命線。

面材や重たい窓を運搬するために大工さんの技術があるのではない。

より多くの技術を住まいに注ぎ込んでもらいたいので、大型パネルを採用することはとても有意義であると思います。

実は一点だけ弊社の仕様の施工上の問題が曇っている(少し晴れ間はあるけど)ので、その辺りをクリアにできれば積極的に採用していきたいと思います。

特に冬の天候が悪い時に、建ったと同時に雨や雪から建物を守れる状況は画期的です。

今回、横曽根の家は色々な状況から大型パネルの採用に至りました。

現場では1間(1,820mm)〜2.5間(4550mm)が一つのパネルとしてレッカーでつられていきます。

柱と梁と面材で構成されたパネルが金物によって取り付けられています。

金物は弊社でもよく採用する今までと変わらないまま。

今回はとても大きな開口に囲われた空間があります。

ここは南面なのでペアガラスですが、それでもやっぱり窓は重量がある。

重たい窓も3箇所同時に取り付いたまま、建てていけるのは画期的。

建てると同時に囲われていく様は、体験したことがなくかなり不思議な空間に。

面材の色が変わっているところが防蟻処理(ホウ酸)を施した部分。

実は上記にあげた問題点はここ。

暮らしの工房の標準仕様である、ホウ酸を使った防蟻処理。

殺虫剤ではないため人体には無害で濡れさえしなければ半永久的に効果が持続する(揮発しないので)防蟻処理で劣化対策に抜群な工法です。

「濡れさえしなければ半永久」という部分で、課題が残っています。

建て方時は当然屋根もなければ見上げれば空。

雨が降ってしまうとホウ酸が溶けて流れてしまう。

ホウ酸には脱防止剤を含んだり、ホウ酸の含有量を増やしたり対応してもらっているようですが、やっぱり不安。

この課題をどうするかに悩んでいます。(特に防水が早めに欲しい冬工事)

ホウ酸を現場施工でもできるので、工場ではどこまでパネル化するかの見極めと生産性が今後の課題です。

 

大型パネルのいいところは汎用性にあると言いましたが、どこまでパネル化するかを各自で決めれるところがいいところ。

ここが特殊な工法やフランチャイズによる工法とは全く違う部分です。

あくまで今まで現場で行ってきた作業を、工場で行うだけ(だけと言ってもそこに大きな意味がある)。

だからこそ、採用したいのです。

 

最近耳にした「手抜き料理」「簡単でいいよ」問題。

家事をしない人が手抜き料理と言うなと。。。簡単でいいよ。の簡単って簡単じゃないんだよ。と言う。

私は料理をするので、絶対に言いませんが。(簡単にしよう。と言うことはあるけど)

冷凍食品を「手抜き料理」と言っていたことに対して、冷凍食品メーカーの言葉。

「手抜きではなく、手間抜きなんだ。手は抜いてない。家でやる野菜などの加工を工場で行っているだけ。家の手間を工場で賄っているだけ。手抜きではなく、手間抜き」

そうだなぁと深く感心した。

工場で行うことを手抜きと言われると、食品メーカーも気を良くしないし、決して手を抜いているわけでは無い。

大型パネルも現場の手間を工場で賄う現場生産の手間抜きなんだ。

 

職人さんが高齢化していく現場、暮らしの工房の仕事を協力してくれる大工さんはまだまだ若くて体力もあるけど、重労働が過酷になっていく状況になっていく。

その時に私ができることは生産方法を少しでも良い状況に変えていくことなんだと思います。

それが現場での安全性、品質の確保に向かうし、熟練技術を駆使できる内部造作に注力できることによって住まいの質の向上に必ず向かっていくから。

そんな大型パネルを採用して、建て方初日に壁に囲まれた状況で、横曽根の家は上棟をむかえました。

横曽根の家はワンフロアで生活が完結する平家スタイルの住まい。

2階建ですが、2階はワンフロアの子供スペース。ロフトのような間隔。

極力ワンフロアでの暮らしがやっぱり暮らしやすい。

そんな提案をしながら、リビングは今までに無いぐらいの大開口で構成した外と中を曖昧につなぐ空間。

出来上がりが楽しみです。

完成は11月末ごろ。


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