メニュー
3-6-35mahorobakanⅡ-A, Kokufu,
Joetsu-shi, Niigata, 942-0082, Japan
コラム
column

上越市立水族館うみがたり。(設計:日本設計)

上越市立水族館うみがたり(設計:日本設計)がオープンして一週間。 私プレオープンの間で3日間ほど行ってきました。 すっかりうみがたりファンに(笑) シロイルカやイルカ、ペンギン飼育数日本一という目玉がこの水族館にありますが、私はその目玉の他に、建築的な楽しみがある水族館だと思っています。 動線と感覚の計画がとてもいい、楽しく感じられる水族館で、今まで大小いくつかの水族館へ行ってきたけど、うみがたりはこじんまりと濃密な水族館だと思います。 そんな建築的な楽しみにあふれた水族館を、私目線でご紹介。

外観は日本海の水平線とリンクした水平ラインが強調されていて、遠くから海を横目に近づくととても美しい建物です。 他の水族館と違い、美術館のような外観。レジャー的というよりも文化的な感じです。

アプローチの雁木的通路の屋根は鉄板一枚?めちゃくちゃ薄くシャープに仕上がっています。 これ、真似したい。

雨の道もオシャレに処理していてこれだけで期待しちゃいました。

入場するとこんなホールへ進む。 もはや美術館。 三層に別れた水族館はエスカレーターを乗り継いでまずは一番上へと向かいます。 2層目から3層目へと向かうエスカレーターは暗い空間の中を進み、目線の先にほんのりと明かりが導いてくれます。 このエスカレーターで、うみがたりの世界観に入るよう気持ちが切り替わる誘導がされているので、乗れる人はエレベーターではなくエスカレーターで進むべきです。

エスカレーターの明かりの先は日本海と一体化するインフィニティプールのような水槽。 建物内から見る方が、より建築を楽しめる。

もちろん水槽の近づいて海との一体感を楽しんでもいい…って電柱が最悪な位置にあります。 どうにかならんのか…台無しだ。

と、プレオープン初日にがっかりと裏切られた感を感じていたら、力技で電柱を下げる工事をしていた。 もっと早くにやれなかったのか…

翌日行ったら電柱は全く見えなくなっていた。 日本海と一体化するインフィニティ水槽は見ものです。

これと反対側にイルカプールやシロイルカがいるのですが、当然人気者。 でもまぁ、あれらの集客力は建物関係なしに持っているのでここでの紹介は割愛。

このインフィニティ水槽は日本海を模した大水槽となっていて、この下に近海にいる魚たちが大量に回遊しています。 順路はこの大水槽を中心に展開されていくのですが、この見せ方が私を虜にしてしまった一番の部分。

順路に沿っていくと浅瀬の水槽からだんだん深くに潜っていくように歩いて行き、深くなるにつれて暗がりへと変わります。 そして所々の建築の隙間や裂け目から海の中が覗けるような建築と一体化した水槽へと展開されていきます。 この効果が抜群で海の中が、海底を歩いているような感覚にさせてくれる。

トンネル水槽も目玉かもしれないけど、私はそんなものよりも建築の隙間から見える海の感覚に感動。 竜宮城があったらこんな感じなのか? 建物2、3階にいるはずが、気分は海底の中です。 こんな水族館見たことない。 自分も魚になったように、水槽面に近づくと岩場の陰に隠れているような気持ちになったり、魚たちと一緒に海の中にいるような感覚。 今までのの水族館は水槽に対して見るという明確な境界線があるのだけれど、建築と一体化することによってここまで感じ方が違うのかと感心しました。 おそらく今まで通り「水槽の中の魚とそれを見る人」という構図であれば、珍しい魚やレア魚がいなければ勝負できなかっただろう。 日本海近海に生息する生き物のみという地味な魚たち、居酒屋でよく見る地魚達しかいない水槽でもとても美しい。 ホウボウが泳いでいる姿を見れるなんて思いもしなかった。

そして水槽には自然光がたっぷりと注がれて様々な水の表情を見せるのがとてもいい。 あいにく3日間とも燦々と降り注ぐ太陽の下だったけど、夕日の時刻、午前、午後、曇り、雨、夏の太陽、冬の晴れ間、季節、時間、天候無限の組み合わせの表情が楽しめる水槽も魅力の一つだと感じています。

日本海の大水槽を海底まで進むと深海ゾーンという別世界に誘われます。 深い深い海の底を味わいながら歩いていくと、一気に白い内装へと様変わりして開けた空間に出る。 深海の抑制された世界から一気に解放される感覚は、深海のさらに奥にある未知へ到達したような感覚。 世界観が一気に変わります。 漫画ワンピースのリュウグウ王国ってこんな感じなのか?

流線型のフレームで切り取られた水槽はシロイルカがたまに泳いでくる。 その優雅な姿はとても美しく絵画を見ているよう。 そう、この空間は絵画を見るための美術館のようなのだ。 今までの展示のやり口とは一線を画し、自然のままではなく芸術品を見るための空間になっている。 深海の奥を抜けた先に特別な空間が用意されていた。

イルカの水槽も同じく綺麗に切り取られ絵画のような水槽に。 なかなか降りてこないけど、水槽に入り込む自然光の美しさも必見。 それを見るだけでも飽きないし芸術性に高い。 イルカやシロイルカという人気者達に最大限のリスペクトがされている。 そして一度扉を挟んで現実の世界へと戻ってきて終わりペンギンゾーンへとなるけど、ペンギンはいたって普通かなと…

とにかくいろいろなメインキャラよりも何よりも、水槽をめぐるストーリー展開、建築の仕掛けがめちゃくちゃ面白い。 シロイルカやイルカ、ペンギンがフューチャーされていますが、この水族館のあり方、楽しみ方も一見の価値ありです。 こんな感覚にされた私はがっちり心を掴まれました。

通年を通して行われるイルカショーは水平線から飛び出します。

イルカ水槽は、イルカショー中のイルカを下から見ることが出来るのも楽しみの一つ。 水中での躍動も面白い。

さらにイルカショーの場所は飲食可。 イルカショーの合間時間を狙って、気持ちのいい景色を眺めながらソトメシは最高。 落ち着いたら絶対にビジネスマンのサボリスポットとなりそう(笑)

ここまで大絶賛も水族館だけど、レストランはもっとしっかりしてもらいたかった。 昨今は美術館と美味しいレストランは切っても切れない存在。 文化施設で美味しい食事を楽しむ文化をもっとつくるべき。 レストラン利用だけでも訪れる機会を増やすべき部分だと思うし、集客力がある水族館だからこそ家賃収入も得やすいと思うのだけど… 水族館利用だけでない価値をつけることが大事なことだと感じています。 それと入場料。 年間パスが安すぎる。 これで大丈夫なのかと心配になってしまう。 赤字になれば税金負担なのだろうからもう少し高めに設定すべきではないのだろうか? 結局市民に負担がかかってしまうのだから。 それだけ価値のある水族館だと思うのに価格設定が不安でしかない。 入場者数は増えるのだろうけど…いくら公共施設だと言っても大事なことは入場者数ではないと思う。 こじんまりとしたとてもいい水族館なだけに、持続可能な運営が出来ることを期待したい。

うみがたり、私はとても好きなスポットです。


関連記事
  • 雪が暮らしにもたらすもの。雪国で心地よく暮らす設計術。

  • 西本町の家の隣の建物。

  • 正善寺エリアの里山空間。

  • 神社で地鎮祭は天候を気にせず誰もが参加できるメリットがある。

  • 直江津のまちのヒューマンスケール。

この記事をシェア